ボクのお母さんは小学校4年生のとき交通事故で亡くなりました。
それから4年間はお父さんと二人暮らしでしたが、中学校3年生になったばかりの日曜日のことでした。
お父さんが朝から出かけ、部活にも入っていなかったボクは留守番をしていました。
夕方頃にお父さん帰って来ましたが、若いお姉さんを連れていました。
そして
「サトシ。
この人が今日からお母さんだからね。」
と言いました。
あまりに突然のことで、しかも今年五十歳になる父親が自分の娘のような若い女の人と再婚するなど思いもよらなかったので、しばらく黙っていると
「サトシ君、初めまして。
急なことでビックリしちゃったかもしれないけど、よろしく。
何か困ったことがあったらいつでもママに言ってね。」
玄関で立ちすくんでいるボクの前にひざまずくと、そのお姉さんはボクの両手を取ってこう言いました。
ボクは思わずその手を振りほどいて部屋に駆け込みました。
本当のお母さんでも「ママ」なんて言ったこともなかったのに、
初めて会っていきなり「ママに言ってね。」なんて言われたものだからとても驚きました。
そして両手をつかまれた時の温かく柔らかな感触。
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