「あ~もう、いい加減このコピー機買い換えてくれないかなあ…」また調子が悪くなった機械を前にがっくりきながら、内心つぶやいた。
時計は20時をまわりそうだ。
今日は夫に早く帰れると言ってあるのにな…課長が戻ってくる前に仕事を片付けたい。
帰宅前に一度、課に顔を出すといってたし、そうなるとまたなんだかんだ言われて、帰りが遅くなる。
「どしたの?」もう一人、デスクで残業をしていた後輩の佐藤君が席を立って声をかけてくれた。
「またおかしいのよ、コピー。もうボロなんだし、早く買ってよって感じ」
「ふ?ん、どれ」佐藤君は私の脇にしゃがみこんで、コピー下部のカバーを外して中を覗き込んだ。
ちょこちょこっと何かいじっていたが、「多分これでいいと思うよ。ちょっとやってみて」としゃがんだまま言った。
スタートを押すと、滑らかに機械が動き出す。
「あ、よかった!助かったぁ」と喜んだ途端、ふくらはぎに何か触った。
「え?」慌てて見下ろすと、佐藤君がゆっくりと私の左足を撫でている。
「いいにおいだよね。香水、何使ってるの?」
「ちょっと、佐藤君!!」頭の中がぐるぐる回る。
反射的に左足で蹴り上げようとした途端、すばやく佐藤は立ち上がり、いきなり私の腰を片手で抱くと、そのまま思い切り私の背中を脇の壁に押し付けた。
「なに、するのよ…冗談やめてよ」自分が危険な状態にはまりかけているのを感じながら、私はまだ同僚の佐藤の理性に頼ろうとした。
佐藤は全身を私に預けるように密着させ、左足を私の太腿の間に力ずくで割り込ませてきた。
「ほんとにやめてってば。大声出すわよ」例え叫んだところで、人が来てくれるかどうかわからない。
中途半端な時間で、ビルの守衛さんも廻ってはいない。
希望は、課長がここに帰ってきてくれることだ…佐藤は無表情で、左膝を少し上げた。
セミタイトスカートが持ち上げられ、男の太腿が布越しにクリトリスに擦りつけられるのを感じる。
「やだっ!!」反射的に右手を振り上げて佐藤の顔にぶちあてようとしたが、それよりも早く佐藤の左肘が私の咽喉に食い込んだ。
「ぐっ…」苦しくて力が緩んだ瞬間、佐藤は器用に片手でポケットからセロテープを取り出し、素早く私の右手親指に巻きつけた。
そのまま手を引っ張られ、左手親指も右手とあわせてくくられる。
それだけのことで、両手は自由にならなくなってしまった。
佐藤の手際のよさに、不吉なものを感じて全身から汗が噴き出した。
佐藤はハンカチを取り出すと、私の口の中に捻じ込んだ。
そして咽喉から肘を離すと、「ごめんね、苦しかった?暴れたり大声ださなければ、もう痛いことはしないからね」と私の目を覗き込んで言う。
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