最近、新幹線は禁煙車の方が混んでいる。
そういう俺も禁煙車の愛用者だが。
さて、冬のある日、出張でひかり号に乗車した時の事。
新幹線は超満席で、デッキに立客もいる。
俺は指定席の2人がけ通路側D席に座っていたのだが、後ろの方で
「足が邪魔だよ。パソコン打てねえじゃねえか」
「すみません」
「オギャー!(×_×)」
「デッキ行けよ、馬鹿(-_-#)」
ふと後ろを振り向くと、窓際の席に座った子連れのママが、隣に座っている若いリーマンに文句を言われていた。
あまりの言われように、
「ちょっと兄さん、赤ちゃんが泣くのは当たり前だろ、あんたの方がうるさいよ」
と俺は強めに言った。
「だけどよぉ、このガキの足が邪魔なんだよ」
確かに、男の膝の上にはノートパソコン。
気持ちは分からないでもない。
若い丸顔のお母さんは、1歳ぐらいのむずがる女の子を抱えて俯いている。
「じゃあ兄さん、俺が代わってやるよ。俺は東京着くまでする事ないし」
「本当っすか?」
若いリーマンは荷物をまとめると、俺と席を替わった。
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ、自分も子持ちだから分かりますよ。赤ちゃんこんにちは♪」
赤ちゃんの機嫌が多少良くなった。
話を聞いてみると、単身赴任しているご主人がなかなか帰ってこないので任地に子連れで押しかける所だという。
単に話を聞くと言っても、朝の上り新幹線は静粛な空間。
自然と頬を寄せて語り合うような形になっている。
奥さんが、俺の耳に息を吹きかけるように語り、俺も息を吹きかけるように小声で囁く。
俺はどぎまぎしたが、奥さんは意に介していないようだ。
奥さんが子供を抱えて立ち上がろうとするので、
「どちらへ??」
「・・・・」
「子供見てますよ」
「すみません」
確かに、デッキは立ち客で溢れていて子連れでは大変だ。
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